My Roots My Favorites 幸田浩子(オペラ歌手)

いつもそばに、モーツァルトがいてくれた。

 たくさんの出会いや出来事のピースが複雑に絡み合って、今の自分の音楽人生が築かれている気がします。その大切な成長や経験の際、いつもそばにモーツァルトがいてくれたと感じています。

 両親ともに音楽好きで、家には音楽が溢れていました。ピアノもヴァイオリンもクラリネットも習ったけれど、どれも下手っぴで。音楽を表現するには、口ずさむことの方がシンプルで自然でした。そんな時よく「トルコ行進曲」のメロディなども歌っていました。

 大学院生の時、定期演奏会で初めてソロを歌ったのもモーツァルトの「レジーナ・チェーリ」です。とてもとても厳しかった先生が初めて褒めてくださいました。

 ウィーンに暮らすことになったきっかけもモーツァルト。イタリア留学中に、ウィーン・フォルクスオーパーの「魔笛」のオーディションを受けました。その際「魔笛」公演だけではなく、専属になりませんか、とお声をかけていただいたのです。

 モーツァルトの息吹があちらこちらに感じられるウィーンの街からは、たくさんのイマジネーションや喜びをいただきました。フィガロ・ハウス*、アン・ デア・ウィーン劇場*、そしてわたしの借りていたお部屋の大家さんは、なんとモーツァルトの生家の大家さんのご子孫でした。

 初めての本格的なCDレコーディングもプラハでの「モーツァルト・アリア集」です。

 2015年東京での宮本亜門さん演出による「魔笛」。たくさんの美しい瞬間を頂きました。子どもたちのチャーミングな演技と澄んだハーモニーも忘れられません。

 そして2017年、神奈川県民ホールでの「魔笛」です。きっとまた新たなキラキラとした出会いと発見をいただくはずです。今からとても待ち遠しく、愛おしく感じています。 (談)


*フィガロ・ハウス:モーツァルトが「フィガロの結婚」を作曲した家。1784年から1788年まで住んだ。現在はモーツァルト博物館。

*アン・ デア・ウィーン劇場:「魔笛」の台本を書き、パパゲーノを演じたエマヌエル・シカネーダーがつくった劇場。1801年落成。


幸田浩子 Hiroko Kouda

数々の国際コンクールで上位入賞後、オペラの本場欧州の主要歌劇場で活躍し、名門ウィーン・フォルクスオーパーと専属契約。帰国後は主要オーケストラとの共演や全国各地でのリサイタルの他、テレビ、ラジオのMC等多彩な活動を展開。2017年3月神奈川県民ホール「魔笛」にパミーナ役で出演予定。二期会会員。

Photo(上から)

幸田浩子

2015年 東京二期会「魔笛」から

プラハでのレコーディング風景

プラハ、モーツァルトゆかりのベルトラムカ荘にてプロモーションビデオ撮影風景

kanagawa ARTS PRESS

神奈川芸術プレス WEB版