5 Rooms − 感覚を開く5つの個展
神奈川県民ホールギャラリー
私たちは日々多くの物事を選択し、判断し、行動します。その中でなんとなく腑に落ちないまま、無意識のうちに自分を言いくるめてやりすごしてしまっていることはありませんか? 人間の「頭」はあらゆる事をコントロールしたがるという特徴があり、ともすれば自分自身が「心」や「身体」で感じた事にさえ干渉してしまうことがあります。
本展覧会では「頭」で作られたテーマにあわせて作品を選ぶのではなく、作品と向き合い「心に響くか」という直観に従い5人の作家を選びました。圧倒的な力で私たちの感覚を揺さぶる作品は、鑑賞する人々の記憶と結びつき、さまざまな感情を呼び起こすことでしょう。
第1展示室は、紙のように薄くのばした真っ白な磁器を組み立て、繊細な造形を生み出す出和絵理(1983~)。光と影の織りなす静謐な空間は、出身地・石川県の雪景色を思わせるような澄んだ緊張感をもたらします。第2展示室は、漆と真正面から向き合い、そのあり方を問い続ける染谷聡(1983~)。どこかで拾った小枝や石や針金などの「ありもの」と「漆」を、遊び心を交えた独自の手法で関係させ、存在の奥行を引き出してみせます。第3展示室は、細かく描かれたドットを100回ほどインクで刷り重ねるというシルクスクリーンによる手法で独自の表現を開拓する小野耕石(1979~)。鍾乳石のように突き出る無数のカラフルなドットは、見る角度によってさまざまな表情に変わり視覚を興奮させます。第4展示室は、写真という手段によって、見る人の記憶の奥深くをゆさぶるようなイメージを紡ぎだす齋藤陽道(1983~)。生命のうつろい、存在の輝き、森羅万象の不思議に向けられた作家の眼差しが、私たちが日頃忘れてしまいがちな感覚を呼び起こします。最も広い第5展示室は、不要になったビニール袋や廃油から作った石けんなどを使って、各地で印象的なインスタレーションを展開してきた丸山純子(1976~)。700㎡の広大な空間に「死を思う」をテーマとする壮大なインスタレーションを制作します。
会期中には作品展示だけでなく、作家によるトークや、「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」などのイベントも開催します。神奈川県民ホールギャラリーの5つの部屋で開かれる本展が、感覚を開き、自分で感じ、自分で考えるための場になることを願います。
文:森谷佳永
(神奈川県民ホールギャラリー担当)
2016年12月19日(月)〜2017年1月21日(土)(12月30日(金)~1月4日(水)休館)
10:00~18:00(入場は閉場の30分前まで)
神奈川県民ホールギャラリー
一般 700円 学生・65歳以上 500円 高校生以下無料 ほか団体割引等あり
※チケットかながわでの取り扱いなし
イベントなどの詳細はHPでご覧ください。
コラム〜知れば、知るほど、好きになる「美術の小箱」漆の時間〜もご覧ください。
Photoキャプション(上から)
出和絵理 〈Forest〉 2011年
染谷 聡 〈からくさ〉 2016年 photo: Takeru Koroda
小野耕石 〈Hundred Layers of Colors〉 2016年
齋藤陽道 〈あわい〉 2016年
丸山純子 〈Highsealand〉 2013年
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