モンテヴェルディ生誕 450 年特別企画 「聖母マリアの夕べの祈り」 、「ポッぺアの戴冠」

神奈川県立音楽堂

リナルド・アレッサンドリーニ指揮 コンチェルト・イタリアーノ

「聖母マリアの夕べの祈り」

鈴木優人指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン

  歌劇「ポッぺアの戴冠」

(演奏会形式・日本語字幕付 )

聖母と悪女―稀代の天才作曲家が残した二つの傑作

 クラウディオ・モンテヴェルディをご存知ですか? J・S・バッハがバロック音楽の最後を飾り、その後の音楽の礎を築いた作曲家であれば、ヴァイオリンの聖地イタリア・クレモナで1567年に生まれ1643年に没したモンテヴェルディは、ルネサンス最後の巨匠で次のバロックを切り開いた革新者でした。生誕450年となる2017年、神奈川県立音楽堂では、古楽界最高峰の布陣で、この音楽史上最重要作曲家の二つの傑作をお届けします。

 6月は、古今の宗教音楽のなかでも高い人気を誇る「聖母マリアの夕べの祈り」が取り上げられます。

 「聖母マリアの夕べの祈り」はモンテヴェルディ40歳の1610年に出版されました。この年はガリレオが木星の三つの衛星を発見した年。ガリレオがこの大発見から伝統的な宇宙観を否定し科学に大変革をもたらしたように、モンテヴェルディも当時の最新の音楽様式を大胆に取り込んで、ルネサンス時代の教会音楽をはるかに凌駕した作品に創り上げました。

 全14曲(内2曲のマニフィカトはどちらか1曲演奏)は、曲ごとに異なる様々な編成や様式で書かれ、時に声と楽器の名人芸が披露され、時に立体的な音楽空間を創り上げる複合唱が響き、また色彩豊かな器楽合奏が奏でられるなど、作曲者の卓越した感性と情熱が詰まっています。

 完全なかたちで楽譜が残っていない本作は、演奏者の洞察力が試される難曲。イタリア・バロック音楽演奏の第一人者であり、本作品の優れた録音で知られるリナルド・アレッサンドリーニ率いるコンチェルト・イタリアーノの来日が決定しました。神と聖母マリアへの祈りとよろこびにあふれる名演をお楽しみください。

 11月は、モンテヴェルディの最晩年の作品で、バロック・オペラのなかでも今日でも再演の機会の多い「ポッペアの戴冠」を、日本が世界に誇るバッハ・コレギウム・ジャパンが演奏会形式でお届けします。

 モンテヴェルディは「聖母マリアの夕べの祈り」出版の3年後、ヴェネツィアのサン・マルコ寺院の楽長に就任しました。一大商業都市であったヴェネツィアでは、市民のための劇場が作られカーニヴァルの季節にはオペラが初演され大いに沸きました。1642年のカーニヴァルで初演された「ポッペア」は、本来ギリシャ神話を題材にしたオペラで、歴史物語を採り上げた当時としては画期的な作品でした。

 ところは古代ローマ。夫である将軍オットーネの不在中に皇帝ネローネ(ネロ)と愛を交わした絶世の美女ポッペアが、愛と野心のため皇帝を籠絡し、道理を説く哲学者セネカを自殺に追いやり、復讐を企てる皇后と夫を退けめでたく皇后の冠を戴くという「アモーレ(愛の神)の勝利」を謳った、当時のカーニヴァルの熱狂を彷彿とさせる、陰謀とエロスが渦巻く圧倒的な悪女の物語です。

 愛の官能性、不貞の妻に未練を残す夫の迷走する思い、皇后の激情と流刑に処される慟哭と、現代劇にも引けを取らない生身の人間の心理描写が、老練な作曲家の手により、変化に富んだ音楽表現として浮かび上がります。

 聖母と悪女―対照的な二人の女性が霊感を与えた稀代の音楽家の創造の実りを、どうぞご堪能ください。

文:川西真理


〈モンテヴェルディ生誕450年特別企画〉

モンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」

リナルド・アレッサンドリーニ指揮

コンチェルト・イタリアーノ

2017年6月3日(土) 16:00 神奈川県立音楽堂

全席指定 一般8000円 シルバー(65歳以上)7500円

学生(24歳以下)5000円

2/4(土)KAme先行予約 2/11(土)一般発売

歌劇「ポッペアの戴冠」(演奏会形式・日本語字幕付)

鈴木優人指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン

2017年11月25日(土) 16:00 神奈川県立音楽堂

出演:森 麻季(ポッペア)

レイチェル・ニコルズ(ネローネ)

クリント・ファン・デア・リンデ(オットーネ)

波多野睦美(オッターヴィア)

ディングル・ヤンデル(セネカ)

櫻田 亮(ルカーノ)

藤木大地(アルナルタ)

小林沙羅(アモーレ)  他

全席指定 一般9000円 シルバー(65歳以上)8500円

学生(24歳以下)5000円

5/27(土)KAme先行予約 6/3(土)一般発売


Photo(上から)

コンチェルト・イタリアーノ

バッハ・コレギウム・ジャパン ©team Miura

リナルド・アレッサンドリーニ

鈴木優人 ©Marco Borggreve

kanagawa ARTS PRESS

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