My Roots My Favorites クレメンス・ハーゲン(チェリスト)
音楽を共有し、互いに刺激しあって
ファンタスティックな音の感覚、
インスピレーションを培いました。
私の、そして私たちのクァルテットの原点は、最初の出発点から「人と音楽を共有してきた」ことです。私は5歳でチェロを始めました。5歳の子にとって、毎日の練習は無味乾燥なものです。人と演奏すると、それが互いに刺激し合う楽しいものになり、ファンタスティックな音の感覚、音楽的インスピレーションを培えるものになりました。8、9歳の頃に、私たち兄弟は、自分の楽器の練習以外に毎日1時間は室内楽にあてていました。他の楽器の音を聴いて、何がおこっているかを感じとり、自分の音を重ねて上質なものを創る。その体験を、はじめの一歩から積み重ねてきたのです。20歳の時点で、室内楽は私にとって、既に15年もやってきた、ごく当たり前のものになっていました。
幸運にも15歳で最初にロッケンハウス音楽祭に出た時が、人生を変えた大きな瞬間です。周りを見回すとクレーメル、ツィマーマン、アンドラーシュ・シフ……すごい芸術家たちがいて。この偉大な人たちが私たちと一緒に演奏したいと思い、楽しんでくれていると気づいた瞬間は、とても信じられませんでした。もう大興奮。ティーンエイジャーですからね。あれはすごい自信になりました。でも不思議と内面は……何と言ったらいいか、リラックスしていたんです。自分の胸の中にある何かは変わらない、と感じました。「自分はこの、音楽の世界の一部なんだ」と思いました。「これでいい。大丈夫。これは自然なことなんだ」と。エキサイトとリラックスが共存しているような感覚でしたね。
音楽の仕事を続けてきて、リラックスは常に心がけていることです。そしてリラックスするためには、信頼できる音楽家と一緒に演奏する、ということが、やはり最も重要ですね。ソロと室内楽は全く別物で、どちらだけでももう片方が恋しくなるでしょう。両方ある、ということが私には大事なのです。 (談)
7月2日にハーゲン・クァルテットが神奈川県立音楽堂で公演を行ないます。詳しくはこちら
クレメンス・ハーゲン Clemens Hagen
チェロ奏者。ザルツブルク出身。ハーゲン・クァルテットのメンバー。ソリストとして、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルと度々共演を果たし、1989年よりモーツァルテウム音楽院にて教鞭をとる。2017年7月音楽堂「ハーゲン・クァルテット」に出演。
Photo (上から)
クレメンス・ハーゲン(チェリスト)©️武藤 章
(下3点とも)
2017年音楽堂ニューイヤー・コンサート~クレメンス・ハーゲン&河村尚子 デュオ・リサイタル公演 2017年1月9日 神奈川県立音楽堂 ©️青柳 聡
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