かながわ芸能歳時記 大山阿夫利神社の「倭舞・巫子舞」

天平の舞が、古代から続く霊山を雅に彩る

大山阿夫利(あふり)神社「倭舞(やまとまい)・巫子舞(みこまい)」

(伊勢原市大山/大山阿夫利神社/8月)


 大山阿夫利神社の創建は今から2200余年前の祟神天皇の御代といわれ、古くから厚い信仰を集めてきた霊山です。

 大山阿夫利神社の倭舞および巫子舞は、明治6年(1873)に阿夫利神社神官に任じられた国学者の権田直助*が、明治維新後の神仏分離に際し、奈良の春日大社から伝授されたもので、今では地元の中高生に受け継がれ、毎年8月28日の秋期例大祭に社務局前の神前で奉納されます。

 倭舞には4人で舞うものと一人で舞う六位舞(ろくいまい)があり、古(いにしえ)の武官装束で腰に太刀を差し、手には榊や扇を持って舞います。巫子舞には4人または6人で舞うものと一人で舞う白拍子があり、白の千早*(ちはや)に緋色の袴、前髪に花かざしをつけ、五色の長い布を垂らした鈴や扇をもって舞います。倭舞、巫子舞ともに篳篥(ひちりき)、和琴、龍笛、笏拍子(しゃくびょうし)などで演奏されます。天平の舞が、古代から続く霊山を雅に彩ります。

* 権田直助 : 幕末・明治期の国学者・神道家。平田篤胤の門に入り、尊王運動に参加。維新後、阿夫利神社宮司となる。著書「みたまふゆ」「神道大意」など。

*千早:古代から神事において用いられる装束で、公式の神事において白衣・緋袴の上に羽織る。


住所:神奈川県伊勢原市大山355

交通:小田急線「伊勢原駅」下車

   神奈川中央交通バス「大山ケーブル駅」下車

日程:8月28日

お問合せ:大山阿夫利神社社務局 0463-95-2006


◎同時期(8、9月)開催のその他の祭り

小向の獅子舞(川崎市幸区/八幡大神/8月の第一日曜日)

遠藤のささら踊り(藤沢市遠藤/8月16日)


監修:神奈川県民俗芸能保存協会会長 石井一躬

協力:大山阿夫利神社

写真提供:伊勢原市教育委員会



Photo(上から) 

奈良の春日大社から伝わった倭舞

古式ゆかしい巫子舞

kanagawa ARTS PRESS

神奈川芸術プレス WEB版