知れば、知るほど、好きになる 「インスタレーション」、「チェロ」

美術の小箱

インスタレーション

 インスタレーションは、空間全体を作品にする現代アートの一ジャンル。展示空間にさまざまな物を設置し、場所と物との相互作用により、空間を再構築し新たな意味空間を生み出します。1970年代以降、絵画や彫刻と並ぶ表現手法・ジャンルとして一般化しました。

 設置場所はギャラリーや美術館はもちろん、美術とは関係のないアパートの一室や広場や公共施設など。設置する物も絵画や彫刻といった美術品はもちろん、日用品やゴミ、映像や音響まで。どこに、何を設置するかは自由です。

 空間全体が作品であるインスタレーションは、作品空間に全身を浸して「体験」する芸術です。インスタレーションにより、その場所が以前とは全く違う空間に感じたり、日頃気づかないその場所の個性や意味を改めて気づかせてくれます。

 作品は、設置期間が終わると解体・撤去されてしまう一時的なものです。また、特定の場所を想定して創作されているので、設置場所の環境・歴史などを含めて一つの作品です。他の場所に移動すれば作品の意味や価値は変わってしまいます。

 その「仮設性」、その場所だけの特定性が、いつでもどこでも成立する絵画や彫刻などの芸術作品の「普遍性」とは正反対のインスタレーションの魅力なのです。


Photo 丸山純子 《名もなき船のモニュメント》 2016 廃木材、廃油石鹸

5Rooms―感覚を開く5つの個展、神奈川県民ホールギャラリー  


楽器ミュージアム

チェロ

 人間の声に最も近い楽器といわれる温かな響きのチェロは、マルチプレーヤー。オーケストラや室内合奏を低音で支えたかと思うと、ソロとして華やかな活躍もします。

 その構造は本誌Vol.132で紹介したヴァイオリンとほぼ同じですが、長さは約2倍、厚さは約3倍もあります。この大きさではヴァイオリンのように顎で挟めませんので、奏者は椅子に座って両膝で楽器を支え、本体下から伸びるエンドピンを床に刺して楽器を固定し、弓を水平に動かして弦を擦ります。

 チェロは16世紀半ばから使われていましたが、18世紀まで大きさや弦の数もまちまちで名前も定まっていませんでした。当時の弦はヴァイオリンと同様羊腸でしたが、17世紀半ば、羊腸に金属製ワイヤーを巻き付けて低音を安定して出せるようになります。これを機に合奏の一パートに過ぎなかったチェロのためにソロ曲が作曲されるようになり、さらに18世紀初めには現代のチェロとして定着する形とサイズの名器が作り上げられ、奏者たちも弓の持ち方など演奏技法を向上させていきました。

 ところで、エンドピンが使われるのは19世紀後半から。より楽にチェロを支えられるようにと名チェロ奏者セルヴェが考案しました。このエンドピン、床に刺すことで演奏会場全体に楽器の振動を伝えて響きを豊かにしてくれる優れもの。刺す位置によって響きが変わっていくそうです。舞台床のエンドピンの穴は名演の痕跡なのです。


※弦はラ・レ・ソ・ドの4本。本体の大きさに比べると指板はヴァイオリンの本体と指版の比率より若干細めです

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