KAAT×高山 明/Port B 『ワーグナー・プロジェクト』 -「ニュルンベルクのマイスタージンガー」-
KAAT神奈川芸術劇場
劇場がストリートになる、54時間の上演!
この秋、KAAT神奈川芸術劇場では、現実の都市や社会に介入する活動を展開してきた高山明/Port Bによる新作『ワーグナー・プロジェクト』―「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を上演します。
高山明は、演劇の可能性を拡張して、社会に接続する方法を追求するため、実際の都市を使ったインスタレーション、ツアーパフォーマンス、社会実験的プロジェクトなど、多岐にわたる創作活動を展開し、これまで「演劇とは何か」を問い続けてきました。
例えば、2010年にフェスティバル/トーキョーで発表された「完全避難マニュアル 東京版」は、約1か月間にわたり“上演”。ここで観客は、このプロジェクトのサイトにアクセスし、地図をダウンロードして、40箇所の「避難所」を訪問します。観客は移動しながら、どのような経路でどうやって辿り着くかそれぞれが自ら模索するなかで、この演劇的なプロジェクトの観客であり、演者にもなっていきます。このような形態のプロジェクトにおいて、その青写真をどのように作っていくかを見せるのが、高山明の手法ともいえるかもしれません。
日本の劇場では8年ぶりのクリエーションとなる高山。挑むのは、近代的な演劇の手法を確立したと言われるワーグナーを「ヒップホップ」に接続して展開するプロジェクト。9日間かけて「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を“上演”します。
KAAT大スタジオに、サイファー*、ライブ、クラブイベント、ラジオ放送、映像配信、プレスセンター、ラップのワークショップ、ワーグナーやヒップホップについてのレクチャーやトークイベント、ファッションショー、グラフィティなどで構成された複数の時空間を、同時に立ち上げていきます。
集中と求心の手法を確立した作曲家・総合芸術家と捉えられているワーグナーですが、ストリートを舞台にした作品「ニュルンベルクのマイスタージンガー」では、民衆=フォルクによる新たな歌/芸術が生まれる過程が描かれています。そこには、芸術や都市の祝祭を更新しようとした、革命劇としての側面があります。
ワーグナーの民衆芸術への探求が描かれた“歌合戦”を、ストリートオペラと例えられることもあるヒップホップに接続し、劇場をストリートに変えて展開する『ワーグナー・プロジェクト』。6時間×9日間=54時間のタイムテーブルを通じて劇場に新たな「コミュニティ」を生み出す新しい都市の祝祭、ワーグナーのかつてない“上演”にご期待ください!
*ラッパーたちが自らのラップスキルを上げるために公園などに集まり、輪になってフリースタイルでその時の感情や思いをラップしあうもの。
『ワーグナー・プロジェクト』とは WAGNER × HIP HOP = ?
ワーグナー作 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」
ワーグナーの唯一の喜劇で、実在の町を舞台にした職人や町人による”歌合戦“を題材としたオペラです。上演時間が4時間半というオペラ史上最も長い大作の一つ。民衆芸術への探求が描かれた本作は、ストリートを舞台に展開し、ワーグナーが芸術や都市の祝祭を更新しようとした革命劇としての側面をもっています。町の娘と婚約する資格をめぐり、職人の親方歌手たちによる歌合戦が繰り広げられるという物語です。
リヒャルト・ワーグナー(1813~83)
作曲家、指揮者、劇作家、理論家。客電を落とす、オーケストラピットを隠して舞台に集中させるなど、現在に至る劇場の構造、求心の手法を確立した総合芸術家。ロマン派歌劇の頂点に位置づけられ、音楽界だけでなく19世紀後半のヨーロッパに広く影響を及ぼした文化人のひとりです。
『ワーグナー・プロジェクト』―「ニュルンベルクのマイスタージンガー」―
2017年10月20日(金) 〜28日(土)
KAAT神奈川芸術劇場 〈大スタジオ〉
構成・演出:高山明/Port B
音楽監修:荏開津広
ドラマトゥルク:柴原聡子
空間構成:小林恵吾
9月上旬チケット発売開始予定
Photo
高山 明 ©江森康之
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