劇団四季 ミュージカル「ノートルダムの鐘」
KAAT神奈川芸術劇場
「宿命」を描く大人のための演劇作品
世界の光と闇の中で、人は明日を祈り、生きる。
劇団四季では、昨春に人気を呼んだ「オペラ座の怪人」に続いて、今春は世界的文豪ヴィクトル・ユゴーの小説「ノートルダム・ド・パリ」をもとにしたミュージカル「ノートルダムの鐘」を4月8日(日)より上演します。
15世紀末のパリ。幼くしてノートルダム大聖堂の大助祭フロローにひきとられ、その容貌から大聖堂に閉じ込められた心優しい青年カジモド。祭りの日、自由を愛し、決して偏見を持たないジプシーの踊り子エスメラルダに出会い、恋をする。一方、美しいエスメラルダに邪悪な欲望を抱いたフロローは大聖堂警備隊長フィーバスにジプシーの排除を命じるが、フィーバスもまたエスメラルダに心奪われていく――。
「ノートルダム・ド・パリ」は1831年に発表され、人生と社会を見つめ、人間が背負わなくてはならなかった宿命を生々しくも詩情に富んだ筆致で描いた小説として高い評価を受けました。そして1923年ロン・チェイニー主演の無声映画を皮切りに、バレエや舞台、そして1996年に公開されたディズニー長編アニメーションと、多くのクリエイターたちの創造力を刺激してきました。
そのディズニーの長編アニメーション映画では、アラン・メンケンが作曲、スティーヴン・シュワルツが作詞を担当しています。メンケンは、長きにわたり舞台音楽とディズニー映画(「リトル・マーメイド」「美女と野獣」「アラジン」「塔の上のラプンツェル」など)を手がけ、アカデミー賞8回をはじめ、グラミー賞やトニー賞など多くの受賞歴を誇る巨匠。一方シュワルツも、「ゴッドスペル」「ピピン」「ウィキッド」などのヒットミュージカルを世に送り出すなど、舞台はもちろんテレビ・映画など多彩な活動を展開しています。彼らに課せられたのは、世界的文豪によるロマン主義文学を、いかにしてアニメーションにするかというテーマでした。二人を含む製作チームは、物語で描かれている中世パリの時代の雰囲気を尊重し、また物語の基本的な価値観とも言える「宿命感/人間愛/外見ではなく本質を見つめることの真実性」を創作の中心に置きました。その結果、オラトリオ(聖譚曲)のように美しく荘厳で、抒情的な楽曲の数々が生み出されたのです。これらの楽曲はヨーロッパを中心に絶賛され、1999年にドイツ・ベルリンで最初の舞台版が上演された際には、メンケンとシュワルツともに関わっています。
ディズニー・シアトリカル・プロダクションズによるミュージカル「ノートルダムの鐘」は、2014年に米国カリフォルニア州サンディエゴのラ・ホイヤ劇場で初演。「物語に新たな深みを与えた」と高い評価を得たこのシュワルツ演出版では、コメディの要素を極力排し、小説の時代設定に基いて、中世ヨーロッパの時代に実在した演劇的技法を用いています。さらに音楽を ”作品の柱“の一つとして舞台上に聖歌隊を据え、キャストと聖歌隊全員で物語を進めていくことで、まるで礼拝に訪れた会衆により語られた受難劇を連想させます。こうしたシンプルながら正統的な表現形式が、作品のシアトリカルでシンボリックな世界観を支え、楽曲そのものが作品のメッセージの直接的な伝達手段であることを明確にしています。これにより「心に強く訴え、熱烈に感情を揺さぶる。素晴らしいパフォーマンスに促され、観客は喝采する」(バラエティ誌)、「強力で魅力的。愛と報復の物語に新鮮な深みを得る。圧倒的な喜び」(サンディエゴ・ユニオン・トリビューン)などの高評価を得ています。そして、日本では2016年12月東京で初演されました。
「ノートルダムの鐘」劇団四季版の日本語台本と訳詞を手がけるのは、2015年に日本初演されたディズニーミュージカル「アラジン」も担当し、話題を呼んだ高橋知伽江です。2作連続で劇団四季の新作にかかわることになりました。
ディズニーミュージカル「美女と野獣」から20年を超えるディズニーと劇団四季のパートナーシップ。その第6弾「ノートルダムの鐘」。従来のディズニーミュージカルを象徴する言葉を ”ファンタジック“”幸福感“とするならば、「ノートルダムの鐘」におけるそれは ”ドラマティック“ ”シリアス性“。人生の悲哀、儚さや脆さなど、登場人物たちが背負わなくてはならなかった宿命を描き、その先にある一縷の希望を見つめることで、嘘偽りのない立体的な人間ドラマを成立させた大人のミュージカルです。ぜひともこの機会にご覧ください。
文:今井浩一
2018年4月8日(日) 〜8月28日(火) KAAT神奈川芸術劇場 〈ホール〉
原作:ヴィクトル・ユゴー 作曲:アラン・メンケン 作詞:スティーヴン・シュワルツ
脚本:ピーター・パーネル 演出:スコット・シュワルツ 日本語台本・訳詞:高橋知伽江
出演:劇団四季
全席指定 S 11880円 A・サイドA 8640円 B・サイドB 6480円 C・サイドC・サイドイス付立見 3240円
劇団四季予約センター 0120-489444 (10:00~18:00)
photo(2点とも)
上原タカシ ©Disney
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