My Roots My Favorites 藤原道山 (尺八演奏家)

パイオニアであり
チャレンジャーでありたい。


 私は尺八演奏家ですが、自分のルーツと言える人に、まず箏演奏家の宮城道雄が挙げられます。祖母と母が家で箏を教えていて、祖母は晩年の宮城道雄に師事していたので縁を感じていたと同時に、家にある宮城道雄のレコードを繰り返し聴き、身近に感じていました。彼が新しいことに次々と取り組むパイオニア、チャレンジャーであるところに憧れます。私は小学五年生から尺八を始め、中学生で山本邦山先生に出会いました。邦山先生の活動もまさにチャレンジャー。先生から叱られたことはほとんどなくて自由にさせてもらいましたが、それでも「どこかに柵はある」という放牧状態でしたね。藝大へは尺八を学ぶだけではなく、いろいろな音楽を知りたいという思いから進学しました。管弦楽法や対位法などの洋楽の授業も受け、出会った多くの友人と今でも交流は続いています。

 演奏活動を始めてからは、おもしろそうな仕事はなんでも受けるようにしています。求められる以上のものを残していく気持ちで、また、関わることで少しでもおもしろくなればと願いながらさまざまなジャンルの方と仕事をしています。そこでは、突発的に出てくる意外なおもしろさというのもありますが、自分でこういうことをしたいと意識しているからこそこの表現ができるのだ、と思えるのが楽しい。また、毎回同じことができるようになりたいし、毎回違うこともできるようにもなりたいですね。

 最近は教えることに力を注いでいます。「技術」を教えることがなにより大事と思っています。秘技なんて実はたいしたことではなくて、気づいているかいないかの差なんです。聴く耳がありそれを再現できる人だけがその技を習得できるということ、それが秘技だと思うんです。何十回、何百回聴いても新しい発見がある、お客さんにそういう風に感じてもらえるような演奏家になってもらいたいですし、私自身もそうありたいと思っています。

(聞き手・文:結城美穂子)


藤原道山 Douzan Fujiwara

2001年CDデビュー。様々な舞台音楽を手掛ける一方、「古武道」「藤原道山×SINSKE」など多彩な演奏活動を全国で展開。現在、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」にレギュラー出演中。東京藝術大学講師や講演会講師として後進の育成にも力を注ぐ。


*8月23日(木)神奈川県立音楽堂アフタヌーン・コンサートに出演予定。

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