5RoomsⅡ― けはいの純度 The Truth is in the Air
神奈川県民ホールギャラリー
「5Rooms」は神奈川県民ホールギャラリーの個性的な5つの展示空間を活かし、インスタレーションを中心に同時代のアートを紹介するグループ展です。2回目の開催となる今回のテーマは「けはいの純度」。出品アーティストは、和田裕美子(1981〜)、橋本雅也(1978〜)、七搦(ななからげ)綾乃(1987〜)、スコット・アレン(1986〜)、大西康明(1979〜)の5人です。
第1展示室は、細やかな手仕事によって髪の毛をレースのように編み、動植物などをモチーフとして自然の生態系を描き出す和田裕美子。彼女の関心の先にある人々の思考や生命の痕跡が、ほのかなけはいとなって現出します。第2展示室は、独学で彫刻の技術を修得し、鹿の角や骨から、そこに咲いているかのような存在感を湛えた草花を彫り出す橋本雅也。動物と植物、生命と死のあわいに向けられる彼の眼差しは、どこまでも謙虚に本質に迫ろうとします。第3展示室は、新進気鋭の彫刻家、七搦綾乃。どこか不思議な生命感を漂わせた木彫作品は、美しさと同時に何か見てはいけないものを見てしまったような不穏なざわめきなど、見る人にさまざまな感情を想起させる魅力があります。第4展示室のスコット・アレンは、レーザー光線をロウ石やテープ、液体、バネ、モーターなどを使用した装置に屈折・反射させて映し出す光のインスタレーションを「生像」と名付け、「映像」に対する固定化された概念を揺さぶると同時に、見る人へ自由な解釈を促します。大西康明は、ポリエチレンシートや接着剤など形に留めにくい素材を用いて、空間を変容させる作品を制作してきました。その造形は、海、雪、雲のようなイメージをもたらすとともに、その裏側にある空洞や余白の中に「見えないけれどそこにある何か」への想像を促します。本展では、地上と地下にまたがる吹き抜けの第5展示室に、新たな風景を創出します。
目には見えないけれど、
確かに存在する大切なこと
心の機微、生命と死の営み、存在の痕跡など、言葉にすると本質から離れてしまいそうな、直観でしか捉えようのないことがあります。本展では、目に見える現実の向こう側にある、そのような何かを「けはい」という言葉に置き換え、作品を通して探ってみたいと思います。鉱石から金属を取り出し純度を高めていくように、アーティストが作品化することによって純度が高められた「けはい」を感じてみてください。
文:森谷佳永 (本展企画担当学芸員)
2018年12月17日(月)〜2019年1月19日(土)
12月30日(日)~1月4日(金)は休み
10:00~18:00(入場は閉場の30分前まで)
神奈川県民ホールギャラリー
一般700円 学生・65歳以上500円
高校生以下無料 ほか団体割引等あり
*前売券の販売なし
イベントなどの詳細はHPをご覧ください。
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My Roots My Favorites にて出品アーティストの橋本雅也さんをご紹介
Photo(上から)
和田裕美子 「garden」 2015年
橋本雅也 「ニホンスイセン」 2016年
七搦綾乃 「rainbows edge Ⅷ」 2018年
スコット・アレン 「spring」 2017年
大西康明 「fluid volume」 2018年
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