Creative Neighborhoods 街と住まい 「南万騎が原」
第5回
ベッドタウンからニューニュータウンへ
「南万騎が原」
リ・デザインされた南万騎が原駅前の「みなまきみんなのひろば」で開催された「みなまきピクニック」の様子
高度経済成長期、急激な人口増加と都市流入に対応するために、都市辺縁部の里山を削って生み出された郊外住宅地。横浜市では、6割が郊外に居住しているともいわれている。そこでは当時の再先端の都市計画技術を用いて、とても閑静で美しい住宅地を形成することはできたが、その急激な開発の結果、やや個性に欠き、同じような住居、世帯構成、年齢層が集まっており、数十年の時を経て、急激な高齢化を促され、ニュータウンがオールドタウンとなってしまう懸念を抱えている。そんな中で、単なるベッドタウンから、土日も過ごしたくなる、遠くからも遊びに来てくれる、さまざまな世代が集まって暮らす「まち」を目指して、郊外住宅地全体のリノベーションが求められている。
南万騎が原駅前リノベーション(みなまきみらいプロジェクト)とみなまきラボ
図版提供:みなまきラボ運営委員会
相鉄いずみ野線沿線も、昭和30年代から50年代にかけて集中的に郊外住宅地が開発されており、ご多分に漏れず、高齢化と人口減少の未来を待つ状況である。これを食い止めるべく、沿線では、「みらいに向けたまちづくり」を掲げ、公(公共的立場)×民(民間や住民)×学(大学や専門機関)連携で新たなライフスタイル構築を目指すとともに、「駅前リノベーション」と題して、住み替えと多世代循環をめざした再生が試みられている。南万騎が原駅周辺でもリノベーションプロジェクトが実施され、商業施設の建替え、多世代居住のための多様な集合住宅建設が行われるとともに、やや鬱蒼としていた駅前広場をリ・デザインして、子どもたちとのワークショップも交えた魅力ある広場(みなまきみんなのひろば)が創られた(設計:stgk)。同時に、駅周辺では、「みなまきラボ」と呼ばれる拠点を相鉄グループ・横浜市・横浜国立大学・オンデザインパートナーズ(設計事務所)らがともにマネジメントしており、その他運営パートナーや、地域の力を発揮するラボ会員などと協働して、子ども向け体験企画、多世代交流のための企画、地元農家による直売所など、さまざまな活動が企画そして実施されている。2017年11月には、こうした力が集まって、地域の文化祭のような「みなまきピクニック」が開催された。地域の地域による地域のためのイベントとなったこの取り組みでは、普段なかなか表に出られないけれど実はとても高いスキルやパワーを持っているお母さんやクラフト作家などが集まった(2018年も開催)。
こうした活動の丁寧な積み重ねによって、郊外住宅地は、ベッドタウンから、活力の持続する「まち」(=ニューニュータウン)として再編されてゆく。
みなまきラボでは、研究会から体験ワークショップまで、さまざまな活動が生みだされている
「みなまきピクニック」の様子
野原 卓
横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院准教授。東京大学助手・助教などを経て現職。横浜市の都市デザインや大田区モノづくりのまちづくりを始め、現場とデザインをつなぐ都市デザインマネジメントなどの実践・研究活動を展開。著書に『まちをひらく技術』(共著・学芸出版社)『アーバンデザイン講座』(共著・彰国社)など。
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